どうも。
京音4回生で本とかのわーるとか呼ばれている者です。
先日,beatmania IIDX 27 HEROIC VERSEのSP皆伝を取得しました。
IIDXを始めてから苦節2年半,ようやくの皆伝合格です。
さて,取得時の未難状況をみてみましょう。
一度でもSP皆伝を志したことのある読者の方々は,あるいはそうでなくとも合格までになにかがあったことを察されたかと思います。
いったいなにがあったのでしょうか。
0. はじめに
SP皆伝を目指す音ゲーマーには,大別して2種類あります。
前者にあたる音ゲーマーの方々にとって,SP皆伝は(容易ではないにせよ)得意機種と同様の練習をすれば達成できる目標である,といえましょう。
そういった方々の皆伝取得法については,sakさんによる以下の記事がとても参考になるものと思われます。ぜひご一読ください。
さてご想像の通り,これを執筆している私は後者にあたる音ゲーマーでした。
IIDX以前にもjubeatやREFLEC BEAT,pop'n musicなど様々な機種に手を出してはいたのですが,どの機種もいまひとつ一定の水準に及ばないまま音ゲー歴5年を迎えようとしておりました。
本稿は特に後者にあたる音ゲーマーの方々,私と同様の経歴をもつ皆伝志望の方々になんらかの知見を与えることを目標としています。もちろん,他機種の経験が豊富な方々の参考にもなれば喜ばしい限りです。
1. 第一期
私がSP皆伝を目標として明確に捉えはじめたのは,おそらくSP八段か九段を取得した2018年の春~夏ごろであったように記憶しています。
そのまま同じ年の夏にSP十段そして中伝を取得し,順調に未イージーを減らしていきました。秋ごろからはハード埋めにも着手し,2018年末には未易は50譜面,未難は158譜面にまで減っていました。
特にこの時期,私の音ゲーに対する姿勢は「クレジット数とプレイ時間に糸目をつけず,短期間で多くの実績を達成する」ものであったといえるでしょう。1か月で未難を75譜面減らしてみたり,毎日終業時刻までゲームセンターに入り浸ったり…とにかく皆伝合格に向け突き進んでいました。
こういった姿勢は,一見すると中だるみすることなく圧倒的な集中と成長速度で目標まで疾走するようにみえます。しかしこの姿勢に潜む問題点によって,精神的な停滞,そしてIIDXからの一時撤退を余儀なくされることになります。
2. 挫折とその原因
年が明けて2019年3月,このころから私はIIDXに行き詰まりを感じるようになってきました。
新規ランプは相変わらず増えていたのですが,肝腎の目標であったSP皆伝にはどうにも歯が立ちません。また生活環境の変化もあり,前年同様にIIDXに打ち込むことはできなくなりつつありました。
そのうちにライバルのひとりが皆伝に合格し,いよいよ私は冥の乱ノックに手を出します。しかし一向にBPが減ることなく,達成感よりも苛立ちを抱えて帰宅する日が多くなりました。
結局,地力A+までのハードをほぼ埋めたところでIIDXを続ける気力も皆伝を狙う気力もなくなっていました。やがて後述する他機種にモチベーションを奪われ,11月末にはIIDXを一切プレイしなくなっていました。
───さて,上の文章から「クレジット数とプレイ時間に糸目をつけず,短期間で多くの実績を達成する」姿勢の問題点を3つ読み取ることができます。
①現実的でない
当然ですが,モラトリアムを謳歌する大学生でさえ音ゲーばかり遊んでいるわけにはいきません。
本分であるところの学業,音ゲー代を稼ぐためのアルバイト,家族や友人との付き合い…こういったものがある以上,「音ゲーにすべての体力を注ぐ」プレイスタイルはほぼ不可能ともいえるでしょう。経済的事情を考えればなおのことそうです。
実際,当時の私は進級が直前まで確定していなかったり,引っ越しの準備を進めていたり,と課題を多く抱えていました。一見ストイックに見える姿勢はそもそも現実逃避でしかなかったのですが,その実現不可能な姿勢を生真面目にも突き通そうとしたことによって精神的な安定はよけいに崩れていくことになりました。
②成長の指標が他者に依存している
「短期間で多くの実績を達成する」という部分に注目すると,これはひどく相対的な,他者のプレイングに依存した姿勢であることに気がつきます。登録したライバルが新規ランプをつければそのランプを狙い,IIDXを始めて2年で皆伝になった人をみれば「自分は1年でなろう」と意気込み…
こういった対抗意識に基づくプレイングは,特にゲームを始めてから一定の段階に至るまではよい刺激となって有効でしょう。しかし,一定の段階を過ぎると本来の目標を見失うだけでなく,かえってプレイングに悪影響を及ぼすようになる危険性があります。
さらに言えば,会話やTwitterでの冗談交じりの煽りあいや,「皆伝合格の目安は〇〇(クエバド麺ハード,地力Sイージー,発狂四段~六段 etc…)」といった情報も問題になりえます。張られた虚勢はまわりまわって自分を苦しめることになりますし,SP皆伝合格の必要十分条件はSP皆伝合格です。
③誤った目標設定や練習を修正しにくい
成功に基づいた経験論や体系づけられた方法論は,たとえそれが主観的であったり疑似科学的であったりしても理論化されていることによってその問題点に対処できるようになっています。
対して,短期間での上達のみを目標としたアドホックな実践においてその方向修正は困難であり,結果として目標に近づくことのない練習を繰り返したり,無軌道な方向修正によって迷走したりするおそれがあります。
そもそも,SP皆伝の取得を目標に据えた以上それを達成するための方法は2つしかありません。確実に合格できる実力を積んで臨むか,不完全な実力でまぐれ抜けするかです。
当時の自分を振り返ると,前者の方法を意識しているにも関わらず後者のための練習,それも誤った練習をしていたように感じられます。
確実に合格できる実力を積んで臨むのであれば,少なくとも灼熱以外の課題曲を触る必要はないはずです。実際,実機でクレ数を積む代わりにBMSで十分な地力を積んでから皆伝に合格するプレイヤーは少なくありません。
一方,不完全な実力でまぐれ抜けを狙うのであれば,本当に一発で抜けてしまうか,段位曲に特化した対策を十分にとる必要があります。そしてお気づきの通り,段位曲の対策による方法は深刻な癖のリスクと表裏一体の関係にあります。
他機種に熟練し,こういった対策に慣れているプレイヤーならまだしも,特に精通した機種のない私にとれる方法ではありませんでした。実際,170回以上に及ぶ冥の乱ノックは冥(SPA)という譜面そのものに対する負け癖のみを残す結果に終わりました。最小BPは110程度であったと記憶しています。
3. オフシーズン
さて,上記のとおり挫折を経験しIIDXから気持ちが離れていた期間に私はなにをしていたか。
いくつかのゲームを触りましたが,特に以下の3つに熱中していました。
①ボンバーガール
みなさまご存じ脱衣ボンバーマン。
キャラコンテンツとしてなにかと話題を集めやすい作品ですが,ボンバーマンを基幹にMOBAのシステムを導入したカジュアルながらやりこみ要素の多いゲーム性も魅力です。
さらにすばらしい点は,音ゲーのコンディションに関係なくプレイできるゲームであるという点。ゲームセンターに来たものの,音ゲーの調子がどうにも振るわない…そういった日にはボンバーガールをプレイし,試合に気持ちよく勝って一定の満足感を得ることができます。なお,逆のパターンもしばしば起こります。両方ともダメな日はおとなしく帰宅しましょう。
②pop'n music peace
ボンバーガールと並び,休止期間中にメインでプレイしていた機種です。
始めたきっかけは,「音ゲーサークル間の交流戦にポップンで参加しよう」と思ったことでした。以前にも少しだけ触ったことがあり,最高クリア45の状態から始めることには少なからぬメリットがありました。なお,交流戦では後輩にChaos:Q(N)を投げられて惨敗しました。
幸いにして,サークル同期に(元)45全フルコンのインペリアルIIと最高50の発狂皆伝がおり,彼らにアドバイスをもらいつつ順調にクリアランプを増やしていきました。
そして2020年2月,8ヶ月めにして初のLv50クリアを達成しました。
ポップンと向き合った結果,認識力・同時押し・発狂・ソフラン・縦連・トリル・クソ笑顔譜面耐性…といった音ゲーの共通的な地力が向上し,さらに体力とコンボ力も鍛えられたように感じます。許容BADの少ない微辛ゲージや辛ゲージによって,以前のBPに対する認識がいかに甘かったかを痛感させられました。
また,さきほど『挫折』で挙げた問題点に関していえば,その一部を解消することができたように思われます。ライバルの選び方,また目標設定とそのための練習がうまくいったことで,IIDXのときほど停滞を感じずに目標を達成することができました。
③BMS
2020年4月7日,アレが発令されたことに伴い多くの音ゲーマーが2ヶ月ほどのゲーセン禁を余儀なくされたことは記憶に新しいかと思われます。
その期間中,特に娯楽もないので以前プレイしていたBMSを再開することにしました。以前はPS2コンを使用していましたが,諸事情によりゲーミングキーボードを購入してKB勢としての復帰でした。
練習にあたっては主に発狂難易度表を利用し,以前と同様にイージーゲージでのフォルダ周回を中心としていました。ただ,今回はそれと並行してハード埋めも進めていくようにしました。モチベーションの維持という観点では成功だったように思われます。
7月にはPS2コン時代に受からなかった発狂六段に合格し,3か月の間に十分な成果を上げることができました。なによりも,鍵盤を叩くことの楽しさをほぼ1年ぶりに実感し,IIDXを再開する直接的な動機を得ることができました。
4. 第二期
2020年6月,ゲームセンターの営業解禁に伴い私もAC音ゲー(とボンバーガール)を再開することにしました。自粛期間中にBMSをプレイしていたこともあり,「多分そこまで地力落ちてないやろ」くらいの気持ちでIIDXにクレジットを入れました。
一発でエレクリが埋まりました。
それに続くようにp†p,コンフィ,クロペン,Fascination MAXX…と未難が埋まりはじめ,2ヶ月後には地力Sの未難が残り2譜面に。
そして2020年7月27日。
ふと「SP皆伝を受けてみよう」という考えが頭に浮かびます。
ゲームセンターへ赴き,受験用のサブカードをかざして筐体に100円玉を投入します。
SP十段,中伝はもちろん難なく合格。卑弥呼の軸と冥のメイン/サブを天秤にかけた結果,正規で皆伝を受けることにしました。
ギアチェンに失敗して死を覚悟しました。
ハードゲージでは容赦なくゲージを削ってくる中盤の8分軸は,段位ゲージではそこまで脅威とはなりませんでした。
そして,40%のゲージで臨む4曲め・冥。
前半のBPM200地帯,余裕をもってゲージを100%まで回復させます。
ところが,BPMが半減したとたん目線合わせに失敗してしまいます。100地帯を終えて未だ安定しない目線,10ずつ上がるBPM,心のなかでガリガリと削れていくゲージ。
こうなったら目線も23122もあったものではありません。見えるものを押し,見えるものを押し,皿を抜かずに回し,見えるものを押し,ブインブインを繋ぎ,
抜けました。
地力相応のプレイができた安堵が半分,1年越しの成功に対する喜びが半分の心境でウイニングランを駆け抜けていきました。
1年前あれほど切望し,ついに得られなかったSP皆伝が,あまりにもあっさりと手中に収まった瞬間でした。
5. さいごに
この記事を書きながら,特に自信をもてる機種もなく右も左もわからないままSP皆伝を目指していた時期のことをひさびさに思い出しました。皆伝を取りそこねた劣等感が晴れてようやく,音ゲーマーとしてのささやかな成長を実感できたように思えます。
「SP皆伝」をテーマにしておきながら,ほとんど個人の述懐で記事が仕上がってしまいました。攻略法や上達論を求めていた読者の方々にとっては期待外れであったかもしれません。
本稿を著すにあたり,先日はしたかさんさんが投稿された記事に触発された部分は大きいように思えます。私とは比べ物にならないほど努力され,苦心された方の記事を引き合いに出すのは恐れ多い次第ですが,こちらもぜひ読まれることをおすすめします。
ここまでお読みいただきありがとうございます。SP皆伝を志す音ゲーマーの方々に,なんらかの形でこの自分語りが役立つことを願ってやみません。
それでは。