【Vaporwave】必聽の蒸汽波收集 business casual版

 

どうも、300時間かけてSlay the Spireの全実績を解除したです。

 

8月~11月だけでこれ

没頭しすぎて実生活に支障を来しました。

ただいまウインターセールで大幅に値下げ中なので、破滅に追いやりたい相手に送りつけましょう。

 

store.steampowered.com

 

さて、タイトルのとおり今回はVaporwave紹介記事の第2弾となります。

この3か月間business casualというレーベルから発表されたアルバムばかりを聴き続けてきたなかで、とりわけ気に入ったアルバム20枚を紹介します。

なにせ20枚もあるので少々長い記事となりますが、バックグラウンド再生でもしながら拾い読みしていただければ幸いです。

 

 

Q. Vaporwaveを

 

 

A. かまへん

 

……アルバムを聴くだけの記事なので前提知識は必要ないのですが、Vaporwaveが何たるかをおおまかに理解したい方には以下の記事をおすすめします。

 

keionkakimasen.hatenadiary.com

 

ところどころ間違っている説明は読み飛ばしてもよく、少なくとも紹介されているアルバムだけ聴けば「わかった気になる」はずです。

 

 

記事を読むまえに

  • タイトルにはVaporwaveとありますが、あくまでその影響下にあるインターネット音楽の紹介であることをご承知ください。*1
  • それぞれのアルバムはbandcampのリンクから試聴することができます。
    あくまで試聴ですので、気に入ったアルバムがありましたら購入をおすすめします。*2
  • 筆者はシーンに関する知識に乏しく、説明に誤りが含まれる可能性があります。
    事実誤認・不正確な記述などにお気づきの方はTwitter: @dasBuchderI8までお知らせ願います。

 

business casualとは

businesscasual.biz

business casualは2013年にchris†††ことJohn Zobeleによって創設された音楽レーベルです。Vaporwaveを中心としたインターネット音楽の配信、およびカセットの販売を行っており、2022/12/25現在までに373作品ものリリースがなされてきました*3

とりわけFuture Funkの流行を支えたレーベルのひとつとして知られており、現在でも「business casualといえばFuture Funk」という認識が広く共有されているようです。

 

これが私のbusiness casual 20選

①Summer Paradise / architecture in tokyo

 

【オススメ楽曲】 POLYGONモール

ジャケットの緩いフォントに騙されそうになりますが、内容は深くリバーブの効いた夢遊病なトラック。*4

この過剰な残響といいサンプルの使い方といい、こういった空気や寂寥感が後々のMallsoftに引き継がれていったように思えます。オススメ楽曲に他意はありません。

 

②Childhood / Childhood

 

【オススメ楽曲】Got Me Girl

まだ「踊れるVaporwave」としての色彩が比較的強かった初期Future Funkのよさを存分に味わえるアルバム。

最近のFuture Funkではまず聴くことのできないようなモッサリ感というか、垢ぬけていない雰囲気が病みつきになります。ダンストラックに突如として挟まる幕間の2曲もまたよい。

 

③Midnight Escapades / Various Artists

 

【オススメ楽曲】REVERB LITE - For Yu

いまでこそ80~90年代の讃美という単純な文脈で捉えられがちですが、そういった時代への諧謔や悪意なくしてVaporwaveは成立しえなかったでしょう。

80年代の音楽/芸能シーンを手放しに称揚するメディアやリスナーが、処女性を消費されつくした果てにビルの8階から飛び降りた18歳の少女を顧みることはありません。あるいは悪意をもって取り上げられるより幸せかもしれませんが。

 

④Aloe Island Adventures / Aloe Island Posse

 

【オススメ楽曲】High Tide

常夏の島Aloe islandへのフライトをテーマにした作品群には、リリースから7年が経過したいま聴いても衰えないコンセプトの強さがあります。

くわえて、2022年現在では常態化した「80年代アニメ風の少女を描いたジャケット」というスタイルを広めた作品のひとつでもあります。*5

 

⑤Summertime EP / Dan Mason ダン·メイソン

 

【オススメ楽曲】東京 Virtual

ジャンルでもっとも有名なアーティストのひとりであり、初期から現在に至るまで精力的に活動を続けるDan Mason ダン·メイソンの傑作Future Funk。

『プラスティック・ラヴ』『フライディ・チャイナタウン』とあわせて三大擦られシティ・ポップと称される『黄昏のBAY CITY』ですが、私はこのアルバムの間延びした

ダウンテンポなリミックスが一番好きです。

 

⑥Lovestory / Desired

 

【オススメ楽曲】Never Fall In Love Again (ft. コンシャスTHOUGHTS)

順張りも順張り、もはや説明するまでもないFuture Funkの傑作。それゆえに紹介から外すことも何度か考えたのですが、サウンドの魅力には逆らえないものがあります。

Vaporwaveの思惟的・耽美的な雰囲気から脱却しつつ、それでいて素材の元ネタに忖度しすぎないバランス感覚、とでもいうのでしょうか。セーラームーンへの偏愛も含めて、Future Funkのパブリックイメージを形成したアーティストのひとりです。

 

⑦RIGHTEOUS GROOVE / AESTHETICS PLEASE

 

【オススメ楽曲】Righteous Groove

まず何といっても目を惹くのが三角形をあしらったポップなジャケット*6。それに恥じることなく、収録されている楽曲も良質なFuture Funkとなっています。

フィルターやエフェクトを多用しながらも、アルバム全体を貫くある種のストイックさがあるように思えます。悪く言うと遊びのなさ・凡庸さではあるのですが、それを補ってあまりあるほど「聴かせる」トラックに仕上がっているのではないでしょうか。

 

⑧サ​ツ​キ​に​、​直​観​が​。​Intuit May / Saury

 

【オススメ楽曲】Message from ラブラブなデート

Sauryの作品は総じて茶髪ロング美少女のジャケットが特徴的ですが、80年代歌謡やJ-POPに対する造詣の深さには驚かされるものがあります。

オススメ楽曲の素材は、野宮真貴による『メッセージ・ソング』のセルフカバー。「離別した子を思う父親の愛」という文脈は漂白され、ものの見事に「ラブラブなデート」の歌に改造されています。小西康陽は何を思う。

 

⑨Midnight Ads / S U P E R F L A T スーパーフラット

 

【オススメ楽曲】The Sound Of The Beat

おそらく村上隆による同名の芸術運動が元ネタとなっているS U P E R F L A T スーパーフラットの作品はファンキーなものが多く、本家French Houseに対する強い志向性を感じます。

……と書いておきながらFrench Houseに詳しいわけではないので、近いうちに本腰を入れて履修したいんですよね。Daft PunkTSUTAYAの閉店セールで一気買いしました。

 

⑩One Hundred Mornings / Windows96

 

【オススメ楽曲】Caligula

知名度の向上にともなって発生した著作権の問題などから脱サンプリング化が進みつつあったシーンを代表する作品のひとつ。

いにしえのコンピュータゲームを想起させる靄がかったチルサウンドが高く評価され、某YouTubeチャンネルでは現時点で最多再生数を誇るアルバムでもあります。早朝の街を歩きながら聴くと最高。

 

⑪CRYSTALあいまい / SAYOHIMEBOU

 

【オススメ楽曲】縄文バックパッカー

beatmania IIDX 28 BISTROVERに楽曲『Mars Beach』を提供したことでも知られるさよひめぼうは、ジャンルに捉われない実験的な作風を特徴としています。

ジャケットやタイトルから察せられるとおり、どのトラックもとにかく情報過多。目まぐるしく変わる不可思議な曲調に翻弄されているうちに、いつしかこの電脳世界から抜け出せなくなっていきます。

 

⑫Advanced Memory Suite / FM Skyline

 

【オススメ楽曲】clean install

先述の脱サンプリング化にくわえて、アンビエントドローンへの接近も近年のシーンにおいて顕著な傾向のようです。このアルバムはそうした傾向をとりわけ色濃く反映しており、人気の高いアルバムのひとつです。

とはいえt e l e p a t h テレパシー能力者desert sand feels warm at nightといったアーティストと比較すると明瞭でトラックも短く、どちらかといえばジャンルを俯瞰した作品といえるのではないでしょうか。

 

⑬HIGH RENAISSANCE AT THE MODERN ART MUSEUM / VANITAS命死

 

【オススメ楽曲】Date at Tate Modern [ 自​己​愛 ] 

おそらく静物画のジャンルが名義の由来であろうVANITAS命死は、美術や美術館をテーマにした作品をいくつかリリースしています。このアルバムもそのひとつであり、作りこまれた複合的なトラックが特徴です。

「印象に残る要素が多い」という理由でオススメ楽曲を選びましたが、コンセプトの徹底したアルバムなので通しで聴いてほしいというのが正直なところです。Mallsoftが好きな人には特に刺さりそう。

 

⑭The Demise of Nanami / nano神社 (✪㉨✪)

 

【オススメ楽曲】The birth of a golden age

Windows 7のプロモーションキャラクター窓辺ななみは10年間にわたって広報活動を続けたのち、サポート終了日の2020年1月14日に「卒業」しました。

このアルバムはそんな彼女への餞であり、同時に強いミームと過剰な情報量を特徴とする2010年代のインターネット文化を懐かしむ作品でもあります。K-POPがVaporwaveの商業的消費を早い段階から行ってきたこととの関連を考えるのは邪推か。

ちなみに厳密にはDMT Tapes FLからリリースされた作品のリイシューです。*7

 

⑮STEREO / Skule Toyama

 

【オススメ楽曲】Palace (feat. Fujifire)

Future Funkというジャンルの洗練にしたがって、初期の不気味な懐古的傾向はすっかり影を潜めました。作者本人の語るところによれば、このアルバムも「好きな音楽の共有」という現代的なテーマから制作されたものです。

それでいて会話やラジオDJ風の演出も適宜挿入されており、初期Future Funkへのリスペクトも感じ取ることができます。Future Funk初心者にオススメの一枚。

 

⑯atlantic memories / vcr-classique

 

【オススメ楽曲】atlantic memories

この記事で紹介している20枚のなかでもっとも刺さった作品です。

Vaporwaveを構成する要素のひとつとしてノスタルジーの喚起が挙げられますが、このアルバムは異様なほどそれに長けています。表題曲「atlantic memories」を聴いたとき、恥ずかしながら目が潤んだことを今でも覚えています。

このビデオカセット風に処理されたBGMを聴いて、存在しない「大西洋の記憶」を思い浮かべた時点で、あなたはもはや引き返せない領域にある……のかもしれません。

 

⑰Goodbye Future Funk / CHANCE デラソウル

 

【オススメ楽曲】Some Anime

なんとまあ不穏なタイトルであることか。しかし、作者本人のコメントによれば「古い作風に別れを告げ、新しいFuture Funkの作風を受け入れる」という意図のようです。

確かに、それ以前の作品以降の作品*8と聴き比べると作風の変遷が感じられる……ような気もしますね。business casualを代表するアーティストのひとりであり、今後の作品にも注目したいところです。

 

⑱Songs For Distance / Pop Up!

 

【オススメ楽曲】Queen Of My Castle

Pop Up!はヒット作Flavoredで特に有名なFuture Funkアーティストですが、今回は敢えてスタイルの異なる作品をピックアップ。

Lo-fi Hip Hopの席巻を苦々しく思うVaporwaveファンは少なからず居るようですが*9、このアルバムではそのシンプルかつ没入感のあるスタイルを取り入れることでジャンルの新たな姿を提示しています。要するに聴きやすい。

 

⑲Vapor Money / DJ Sugar C

 

【オススメ楽曲】Late Nite Lo-Fi Delight

主に日本人やMetallic Ghostsの名義で知られるDJ Sugar CことChaz Allen。そんな彼によるこの作品は、よく言えばVaporwave文化に対するメタ的な批判、悪く言えば内輪ネタが満載。

レーベルや現代の音楽シーンに対する風刺で埋め尽くされたこのアルバムは皮肉にも、何度もその死を宣言されていた在りし日のVaporwaveを懐古させるものとなっています。とりわけアルバム終盤の展開には訴えかけるものがありました。

 

Ethernet Café  / Corrupt Save

 

【オススメ楽曲】Yes or No

今年の9月にリリースされたアルバムですが、最初に聴いたときの感想が「8~10年前のアルバムかこれ?」。数周まわって懐かしいコンセプトも含めて聴き心地がよく、それがまた聴き手を不安にさせます。

「このレーベルが今年このアルバムを出すことの真意」……とまでは言いませんが、2022年現在のシーンに対して思うところはありそうです。10年以上前のアルバムをリイシューしていますし。

 

総評・さいごに

business casualはジャンルでも数少ない10年級のレーベルであり、多くのヒット作を世に出してきました。その全体をみると最初期の作品がたしかに有名ではあるものの、「Future Funkだけのレーベルではない」ということがお分かりいただけるか思います。

一方で、現在のbusiness casualの路線はVaporwaveのシーンから乖離しつつあるのも事実です。かつての看板であったFuture Funkは昭和グルーヴ*10に代表される公式リミックスに乗っ取られつつあり、またレーベルの性格上Barber BeatsSlushwave / Dreamtoneといった最新のトレンドとは反りの合わないところがあるため、これもまた仕方ないのかもしれません。

今後のbusiness casual作品の動向にも注目していきたいところです。

 

 

改めて見返すとジャケットのセンスが高い

 

私自身の話をすると、ディスクガイドを離れて3ヶ月同じレーベルの作品を聴き続けたことで、ジャンルの構造や作品の聴きかたに関する理解が深まったように思えます。

ただ、business casualというレーベルはなんだかんだで一定以上の品質が保証されているので、次は荒行のつもりでDMT Tapes FLIlluminated Pathsあたりを漁るのがいいかもしれません。エタりそうな予感しかしませんが。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。

2023年もならびに京音メンバーの日記をよろしくお願いいたします。

 

それでは。

 

おまけ

 

 

乗り掛かった舟ということで、いまの目標は50クリアをもう4~5譜面ほど増やすことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

quell~the seventh slave~(DPA)から逃げるな

 

 

(本)

 

【本が書いた記事】

 

keionkakimasen.hatenadiary.com

keionkakimasen.hatenadiary.com

keionkakimasen.hatenadiary.com

*1:細かいジャンル解説や「ポモ」的議論は本題ではない、というかそれ以前にできない

*2:一応name your priceになっており、ユーザーが指定する価格での購入が可能

*3:販売停止となった作品を含む

*4:『新蒸気波要点ガイド』ではFuture Funkに分類されているが、当時の基準を考えても怪しい

*5:このジャケット自体は『きまぐれオレンジ☆ロード』の無断使用のようであるが

*6:こういったスタイルは80年代に活躍したデザイナー集団Memphisに由来するらしい

*7:初版からわずか1ヶ月でリイシューされた

*8:勿論この2枚も名盤

*9:要出典

*10:Night Tempo本人はこれとFuture Funkとを区別しているが、メディア露出の言い訳に思えてならない