こんにちは! 最近の自己紹介を考えたけど特に何も思いつかなかった人、コンガリオンです。
突然ですが……
「音を拾っただけ」の譜面って、どう思います??????
例えば、こういう譜面。
…………。
…………。
…………いや、
流石に飽きるわっ!!!!!
……とはいえ、こうなってしまう気持ちも分かるのです。
確かに、音楽ゲームのために制作された楽曲、とりわけ公募採用曲のような楽曲は現在、バイキング1皿目のような展開盛り盛りてんこ盛りの超ハイスピード楽曲*1ばかりの環境になっています。
ただ世間で流行する音楽はそういうものばかりではありません。クラブミュージックのような音楽は、同じパターンの繰り返しを発展させて展開を作っていくものです。
本来、楽曲において、同じフレーズが続くのは当たり前のことなのです。
楽器の演奏において、同じフレーズを同じ楽譜で演奏するのは当たり前のことなのです。
しかし!!!!!
そんな楽曲をそのまま音ゲーの譜面にしてしまうと、マンネリ化してしまいます。一つの配置ができる人はずっとできますし、できない人はずっとできないままで、ゲームとしても競技としても面白くありません。
そういうこともあってか、音楽ゲームの譜面では、同じフレーズの繰り返しにも上手くいろんな配置を取り入れて、楽曲のいろんな側面を楽しめるように作られることが多いように感じます。
ということで今回は、音ゲー収録されている楽曲の中でも特に同じフレーズが続く楽曲をいくつか紹介し、それらが音ゲーの譜面にどう落とし込まれているのかを、SDVXで見ていきましょう!
1. Decretum [EXH 17]
大昔の譜面で申し訳ないですが、まずはIIの時代から1曲。
「デデッデデッデデッデデッ」といった目立つフレーズが曲全体に使われています。譜面の盛り上がりが曲の展開に合っており、難易度が上手く調整されている譜面だと思います。
イントロの半速が終わっていきなりこれ、勢いのある滑り出しです。
フレーズが変わった直後の荒々しさに非常にマッチしています。地味ですが、エフェクトで音が変わっている部分を前の方に持ってくることで、ネタ切れ感がなくなっているように感じます。
イントロ後半、パターンが大きく変わります。直角が入ったりつまみへの移行が入ったりで、譜面に変化が加わります。
ギターパートを挟んだ後、サビ前にも同じフレーズ。
フレーズが変わった直後、直角+鍵盤2個押しで、盛り上げていきます。
直後には、リズムをFXで拾って、BTで他を刻む形。
気持ちよくサビを叩かせた後に、アウトロに向けて準備するパート。
密度は高くないのですが、クセの強い配置です。挑戦段階だとハマりやすい。
87小節からはラストの発狂!
FXロング+トリルで大きく曲を変え、直後には直角でキメる!
曲のクライマックスに相応しい盛り上がりが選ばれています。単にトリルを続けるだけじゃなく、4拍目にFXを入れて仕切り直しているのも、この譜面の上手いところです。
IIの配置の縛り(BTとFXの重なりの制限、つまみが両端からしか生えない、視点変更がない)がありながら、多彩な配置が置かれた譜面になっています。
こうしてまとめて見て気付いたのですが、この曲はフレーズが変化した直後の譜面の圧が強い。逆に同じフレーズが続くような場所では、譜面のパターンを変えながらエフェクトをかけていくような配置がよく見られますね。
2. 最終鬼畜妹フランドール・S [GRV 18]
ビートまりお氏の有名な東方アレンジ。ですが、曲を大きな区切りで分けると3種類のフレーズしかありません。これを譜面にするの、難しかっただろうなあ……
フレーズ1
イントロ部分。楽曲に合わせ、ゆっくり盛り上がっていく様子が譜面に表れています。
9~16小節と17~24小節の密度の変化が面白いです。16小節で両直角を挟むところに、次小節以降への意気込みが感じられますね。
サビが終わった直後には、ダブルレーザーが入ります。エフェクトガンガンかけるレーザーというよりは、移行もなく激しくない配置のつもりで置いてそう。
とはいえレーザーの認識は結構難しいです。GRV18相当といえるでしょう。
フレーズ2
U.N.オーエンでまず耳に残るフレーズ。直角+鍵盤で盛り上げます!
こっちは前述のダブルレーザー直後の配置です。控えめになっています。
転調前に一度落ち着かせ、72小節の直角から再び盛り上がっていくような構成です。
転調!!! 視点が変わって展開が変わります! FXバス+BTメロディ、同時押しのおかげでそれなりに物量があり、リズムの割に難しく盛り上がる配置です。
直後、先程とはうってかわってエフェクトを掛ける!!!!!
散々慣れ親しんだリズムをぶっ壊して展開を作っていく!!!!!
これ全部、同じフレーズですよ……?????
同じ譜面の中でこんなにも変化するんですよ。エフェクトって200種類あんねん。
エフェクトで音自体が変わるのはボルテの良いところですよね。使われすぎると辟易しますが、しかるべき場所で使われた譜面はバエるのです。
フレーズ3
この譜面で一番印象に残る配置が含まれている3つ目のフレーズ。やったことがある人なら一発で覚えるはず。偶数小節の2拍目に、決まって出張直角が入っています。
出張直角でこのフレーズが特徴づけられていて、大変印象に残る配置です。
41~48小節と49~56小節はやっていることがガラリと変わるのですが、出張直角のおかげで統一感が感じられます。
アウトロに向かう部分もそう。違和感がありません。
ラストスパート! 連直角で盛り上がりますが、出張直角が入るところは変わらない。
特徴的な配置を一つベースにして、そこから盛り上がっていく譜面の作り方です。
出張直角のせいでネタ譜面のように見えてしまいますが、実は考えて作っているんだなーと感心した譜面です。
3. Ichi-Go! DX Pancake! [VVD 18]
終始鍵盤主体ながら、譜面として十分な変化がついているとても良い例です。
全体難で歯ごたえがありますが、波もあって面白いです。
基本の配置。以降、これを基準に発展させていきます。
直後の配置。音付きFXチップや直角が入ることで、更なる盛り上がりが表現されています。
一度別のメロディが入り、基本フレーズに戻った直後です。
譜面の方は、基本のパターンに少しだけエフェクトが加えられています。
その直後に片手配置で変化をつけています。
これまでやってきた基本のリズムが腕に刻まれているので、違和感なく叩けます。裏打ちで直角を鳴らしている配置の割に、直角のうるささがあまり気になりません。
キー音がない鍵盤の方に意識を向けられることは、大変面白く感じます。
またまた別のフレーズを挟んで、ラストへ。
ここでは裏にFXチップが入り込んでいます。つまみ放置も加わり、盛り上がっていくのを感じられますね。
先程やった片手の配置。片手中の配置は変わりませんが、つまみを放置した後にエフェクトが掛かり、音が変わっています。慣れ親しんだところで音を変えていくという技法は、ここでもしっかり使われています。
全体難な譜面ですが、今見たような細かい変化で譜面が彩られています。
4. インドア系ならトラックメイカー [MXM 17]
同じフレーズが続く楽曲では、つまみ譜面になることも多いです。
つまみ譜面では、同じ形をキープしつつ、色だけが変わるような配置が多めです。曲独自の個性を残しながら様々な操作感が生まれ、飽きにくく統一感のある譜面になっているのだと思います。
この曲はかつて稼働していたWACCAの譜面で話題になったことがありますが、そんな譜面が生まれたのも楽曲の特性によるものかもしれません。さて、SDVXではどうでしょうか。
イントロは控えめに。
5~8小節で4分の同時押ししか押させないところは、これからつまみ譜面が始まるという合図であり、お気持ち表明でしょう。そういうゲームだからこれ。
間違い探し。サイゼリヤか?
譜面画像で見ると、同じ形を元に少しずつ変化させていく様子が分かります。つまみの位置、回す向き、青と赤を毎回少しずつ変化させていき、認識を要求する譜面です。
新たに加わる4分を直角で拾います。
33小節からの4小節は、2拍ずつ変化する面白い配置。
37小節からは16分が新たに鳴り始め、それを拾います。つまみ譜面に縦連がつきものなのも、つまみ譜面のお作法のようです。こういうゲームだからこれ。
新たに加わる音ということで採譜する妥当性があり、譜面に変化がついています。
間違い探しその2。今度はFXが8分になっていることで難易度が上がっています。
譜面画像では61, 63小節のつまみがなんか微妙に切れてますが、実機では繋がっていますのでご安心を。
立つ鳥跡を濁さず。
つまみ譜面の文脈って偉大だなーと思います。この譜面は特に、曲の変化に合わせて譜面も変化していく良譜面です。
5. 緋色月下、狂咲ノ絶 (nayuta 2017 ver) [MXM 18]
EXCEED GEAR新要素であるところの曲線をふんだんに使ったつまみ譜面です。
そこまで繰り返しばかりでもないような気がしますが、曲の長さに応じて1フレーズが長い。本記事では、サビの変化に感動したので取り上げます。
1サビ。この曲の重唱の部分をダブルレーザーで表現しているのが、大変エモいですね。つまみと鍵盤の往復が忙しくない程度で連続していて、動かしている感を感じられます。後半は鍵盤の形が変わります。
ラスサビ。78小節以降に登場する形が難しくてそこだけに目が行きがちですが、実はこれ、70小節からのつまみの切れ目を接合した形になっているんですね~。
単純な作り方ながら、難易度と盛り上がりの両方の面で曲にしっかりハマっています。気付いたときには感動しました。
……繋がりません。
その他
ほか、SDVX収録曲で、同じフレーズの繰り返しが多く使われている楽曲を主観で厳選。主に昔の公募採用曲や、もともと音ゲー向けに書かれた訳じゃない版権楽曲に多いです。譜面には様々なエフェクターの苦悩と創意工夫の跡が見て取れることでしょう。
good high school [INF 17]
追加譜面でかなり独特なつまみ譜面になりました。8分で回すことが難しいと分かっているからこそのラストです。
Nyan Cat [EXH 13, INF 16]
そもそも曲が3回のループです。
曲が繰り返されるところを、エフェクトで大胆に変化をつけています。赤譜面も虹譜面も見てて面白いです。
このゲームがエフェクトをかけるゲームであることを再認識させてくれます。
余談ですが、maimaiに収録されているNyan Cat EXは大変音ゲーバエする*2楽曲になっています。
Sounds Of Summer [EXH 16]
これもずっと同じフレーズが続きます。そのフレーズだけでは赤譜面相当の難しさになりにくいため、難所が最後に詰め込まれており、難易度曲線が大変なことになってます。
紅の剣舞 [EXH 17]
かねこちはる氏による楽曲です。
直角が大胆に使われており、譜面の盛り上げ方が分かりやすいです。
裏表ラバーズ [MXM 16]
シンプルな配置で、かつ鏡配置が多用されています。全体がまとまって見えます。
Smoked Turkey Rag [MXM 17]
一般通過鍵盤譜面。こういう譜面が一番上手いのかも。
The Formula [MXM 18]
今でもよくわからない。
Яe's NoVǢ [MXM 18]
ボーカル曲ですが、サビやアウトロあたりの音がずっと同じフレーズです。これを常に拾っていると忙しい。ボーカルと伴奏を両方拾っており、切り替わりが多めなのですが、配置が自然で違和感が少ないです。
Believe in yourself [GRV 18]
独特なパターンを作ってそれを展開させる形で譜面が作られています。
ABSOLUTE(ismK passionate remix) [MXM 17]
急に速くなって草。
Toby Foxコラボ各曲
ASGORE / アズゴア
Spear of Justice / 正義の槍
Death by Glamour / 華麗なる死闘
Finale / フィナーレ
Bonetrousle
Spider Dance / スパイダーダンス
SAVE the World
Heartache / 心の痛み
Battle Against a True Hero / 本物のヒーローとの戦い
MEGALOVANIA
THE WORLD REVOLVING
元々がゲームのBGMですので、音ゲー的なおいしさが少ない楽曲たちです。中には尺の都合で2周する楽曲もあったりします。
こういう曲ほど、エフェクターとしての、譜面制作者としての、個性と腕が出るものです。多くの方が譜面制作されているので、見比べると面白いですよ。
……にしても、曲多くないですか。
Help me, ERINNNNNN!!各曲
Help me, ERINNNNNN!!
Help me, ERINNNNNN!! - SH Style -
Help me, ERINNNNNN!! -Cranky remix-
Help me, ERINNNNNN!! -VENUS mix-
Help me, ERINNNNNN!! #幻想郷ホロイズムver.
これも見比べると面白いのではないでしょうか。面白いというより、時代の変遷を感じて余裕でしねる。
これ以外のえーりんは存在しません。
Pet Peeve [EXH 17]
つまみでパターンを作る典型例。ですが、つまみ譜面で楽しいはずの「移行」の概念が、この譜面にはほとんどありません。常に三角形を主軸とした色認識が求められる譜面です。展開を抑えめにして、曲名通りの嫌がらせに徹しようという意図を感じます。そういう意味で良い譜面なのかも。
ナイト・オブ・ナイツ [INF 17]
急なつまみ移行、急な出張つまみ、広い片手……いわゆる変な譜面の代名詞。
それでも、終盤はエフェクトで音を変えている箇所があります。なんとか毛色の違う譜面にしようと頑張っている様子が見られるのです。この譜面も、同じフレーズの繰り返しを譜面に落とし込もうとした末の産物かもしれません。
急にエフェクトを露骨に使われると、レパートリーのネタ切れに見えなくもない。
まとめ
という訳で、同じフレーズが続く楽曲たちでした!
「同じフレーズが続く」ということで紹介しましたが、その同じフレーズの中でも、楽曲内での意味は様々に変化します。そういう意味では、全く同じフレーズが続く曲というのは存在しないのかも……?
音ゲーの譜面って、単に音に合わせたものじゃなく、楽曲内のフレーズの意味を表現するようについているんです。僕らが普段何気なく遊んでいる譜面でも、その裏側には考えて譜面を作っている方がいらっしゃるんですねー。*3
ボルテに限らず、商業音ゲーでも同人音ゲーでも、譜面を作る人も作らない人も、こういう視点の向け方があるんだなあと思っていただければ幸いです。
以上、音ゲーの譜面に関するお話でした!
記事の執筆にあたっては、Мороже氏にかなり助けていただきました。この場を借りて感謝を述べさせていただきます。