どうも、京大ΕΛΠΙΣ(DPA)の当たりオプションはR/-サークル京音の本です。*1
最近はこんなパズルゲームをプレイしています。どちらも歯応えのある良作なので是非どうぞ。
さて楽しかったGWも終わり、読者諸兄におかれましては5月の憂鬱を満喫されていることと存じます。
というわけで、今回の記事はこちら。
よけい憂鬱になりそうな画像が出てきましたが、Vaporwaveを聴いたことがない人向けに定番アルバムを紹介する記事です。
- 質問コーナー
- 【Hypnagogic】World Class
- 【Future Funk】Hit Vibes
- 【Ambient】新しい日の誕生
- 【Utopian Virtual】LARP Of Luxury
- 【Mallsoft】Palm Mall
- 【Signalwave】群馬ハイヌーン Gunma High Noon
- 【Vaporwave】Floral Shoppe
- おわりに
- リファレンス
質問コーナー
Q1. そもそもVaporwaveって何なんだよ
A. 聴けばわかる
「2010年代に発生した音楽ジャンルである」「いくつかの小さなジャンルに分類できる」という2点だけ押さえておけば問題ないでしょう。
Q2. この記事の読みかたを教えて
A. この記事は次の順番で読むことをお勧めします。
- Bandcampの再生ボタンを押す
- とりあえず1曲聴いてみる
- 再生しながら下の文章を読む
- 聴きたいところまで聴き、停止ボタンを押す
- Bandcampのリンクに飛び、アルバムを購入する*2
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Q3. 聴いていたら五月病が悪化したんだが
A. この記事の閲覧および楽曲視聴により生じたいかなる損害に関しても、筆者は責任を負いかねます。
前置きはこのくらいにして、さっそくツアーを始めていきましょう。
【Hypnagogic】World Class
「まずは聴きやすいものから」ということで、最初に紹介するのはHypnagogicというジャンルです。*3
直訳すると「眠りを誘う」となるこのジャンルは、その名のとおり微睡みそうな昔懐かしいローファイ・サウンドを特徴としています。
代表的なアルバムのひとつがWorld Class。深夜の天気予報、あるいはショッピング番組を彷彿とさせる音楽は、聴くものの意識を夢の世界へと誘います。
アーティストLuxury Eliteの特徴といえば、なんといっても煌びやかな80・90年代サウンドです。かつてfortune 500というレーベルを主宰していたことでも知られています。
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【Future Funk】Hit Vibes
一転して、今度は思わず身体が動き出すような音楽です。
2013年頃に登場したFuture Funkは、70~80年代サウンドをフレンチハウス風にリミックスしたジャンルです。ともすれば耽美的・観念的になりがちなVaporwaveに対し、Future Funkはポピュラーかつダンサブルな方向に進化していきました。*4
Hit Vibesはジャンルの原点というべきアルバムですが、最近のFuture Funkと比べるといくぶん靄がかっているように思われるかもしれません。そこがまた良いんですよね。
アーティストSAINT PEPSIはアルバムの発表後まもなく名義をSkylar Spenceと改め、Future Funkから離れた活動をはじめました。*5
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【Ambient】新しい日の誕生
Ambient、あるいは環境音楽というとBrian EnoやAphex Twin、喜多郎などのアーティストを思い浮べる方が多いのではないでしょうか。
場との一体性を重視したAmbientはVaporwaveとの相性がよく、双方のエッセンスをもった作品が数多く発表されています。そういった作品のなかでもっとも高く評価されているのが、この新しい日の誕生です。
多くのVaporwave作品と異なり、このアルバムは環境音と実際の演奏によって構成されています。サイレンや地下鉄のアナウンスのなかで、あなたは無人の百万都市を彷徨っているかのような錯覚に襲われることでしょう。
2814は、レーベルDream Catalogueのオーナーとしても知られるHKEと、象徴的かつ神秘的な作品を発表し続けているt e l e p a t h テレパシー能力者との合作名義です。
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【Utopian Virtual】LARP Of Luxury
趣向を変えて、今度は軽い音楽を聴いてみましょう。
Utopian Virtualは、架空のユートピアで流れる環境音楽をイメージしたジャンルです。
聴いてわかるとおり、このジャンルは機械的な打ち込みを特徴としています。曇りのない明快なサウンドが、かえって空虚性を強調していることは言うまでもありません。
ここで紹介したLARP Of Luxuryのテーマは、ネスプレッソやiPod Touch、プリウスといった様々な工業製品。消費主義と技術革新に支えられた近未来像は我々自身の姿でありながら、我々が決して得られなかったものでもあります。
Eyelinerは他にも同様のコンセプトによる作品を多数発表しており、このジャンルを代表するアーティストのひとりです。*6
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【Mallsoft】Palm Mall
Vaporwaveと環境音楽とのかかわりは、さきほど紹介したものにとどまりません。
食料品、衣服、生活雑貨、家電、書籍、おもちゃ……日常生活のすべてが揃うショッピング・モールの空気感を再現したジャンルがMallsoftです。
ジャンルの提唱者は、多彩な作風のアルバムを発表し続けている猫 シ Corp.。このPalm Mallでは、雑踏の音や人々の話し声、そして深いリバーブによって架空の大型モールが表現されています。
「大量消費社会の完結したモデル」と御託を並べるまでもなく、ショッピング・モールで過ごす一日は多くの人々にとって懐かしむべき思い出でしょう。Vaporwaveというジャンルにおいて、ノスタルジーは欠かすことのできない観念のひとつです。
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【Signalwave】群馬ハイヌーン Gunma High Noon
ここへきて作風が大きく変わり、困惑された方もいるのではないでしょうか。
SignalwaveあるいはBroken Transmissionとよばれるこのジャンルは、テレビ・ラジオのチャンネルを次々と変えていくような構成が特徴です。サンプリング元として日本のテレビ番組やCMが多用される傾向にあり、日本のリスナーにとっては独特の懐かしさがあるかもしれません。
今回紹介するのは、このジャンルのなかでも割と聴きやすいほうのアルバムである群馬ハイヌーン Gunma High Noon。まるで深夜にテレビを観ながら寝落ちしているかのような、どこか心安らぐ感覚を味わうことができます。
ニコニコ動画にアップロードされているPVも一見の価値あり。
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【Vaporwave】Floral Shoppe
さて、我々はついに最終章へと辿りつきました。
現在Vaporwaveと呼ばれているものを完成させ、その後の発展に多大な影響を与えた歴史的なアルバム。それがこのFloral Shoppeです。
ピンクの背景に胸像が際立つ印象的なジャケット、『リサフランク420 / 現代のコンピュー』『ECCOと悪寒ダイビング』といった自動翻訳じみた楽曲タイトル、そして80年代音楽のピッチダウン。全ての要素において多くの模倣者を生み、ミームと化し、それでもなお現代まで一切価値を失わない名盤です。
Macintosh Plusは、ジャンルの初期に多くのアルバムをリリースしたVektroidの別名義であり、上で紹介したHome: Complete EditionやFuji Grid TV EXも彼女による作品です。
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Chuck Person's Eccojams Vol. 1 / Chuck Person*7
おわりに
さて、これにてVaporwaveツアーは終了となります。お疲れ様でした。
Vaporwaveは奥深いジャンルであり、語るべきことは尽きません。まだ紹介すべきジャンルやアルバムは数多くありますが、それはまたの機会にしましょう。
去年の夏頃にこのジャンルと出会ってから、私の音楽観は大きく変化しました。
そういった作品の数々を、今回のツアーで皆様に紹介できたことを嬉しく思います。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
今後とも京音メンバーの日記をよろしくお願いいたします。
それでは。
リファレンス
『新蒸気波要点ガイド ヴェイパーウェイヴ・アーカイブス2009-2019』
佐藤秀彦 (著),New Masterpiece (編集) DU BOOKS,2019
【本が書いた記事】